前説(笑)

10話予告編より…妄想&捏造大爆発です(笑)
ちなみに原作は読んでいなくてドラマのみなのでものごっつーいい加減です。
お許しください。・゚・(ノД‘)・゚・。



『Believe』


ヨコヤノリヒコの放った言葉に激昂した秋山は見事に彼の策にはまってしまった。
冷静沈着…そんな言葉がぴったりとくる秋山が崩れていく。
怒りの炎を燻らせながら「破滅」へと導かれていく秋山の姿を直はただ見ていることしかできなかった。


そして「密輸ゲーム」はヨコヤの思うとおりに進んでいく。




「ねぇ、秋山さん…こんなの、いつもの秋山さんじゃないです!おかしいですよ」

自らの金を使い果たし、他プレイヤーのカードを無理矢理奪おうとする秋山を直は制止した。
瞬間、冷ややかな視線が突き刺さる。
怖い…と感じた。けれど、もう黙っていることなど出来なかった。
目の前のいるのは常の彼ではない。怒りで我を失い、ゲームによって追い詰められている。
秋山の中に感じる「破滅」を今度ばかりは直も感じ取っていた。
このままではいけない。
いつもいつも自分が絶対絶命のピンチの時に現れて助けてくれた彼を救える時があるのだとしたら…。
それは今、この時なのだと直は悟った。


「秋山さん…わたしっ、」

直の言葉を遮るかのように秋山の昏い瞳が睨んだ。
氷の眼差しに射竦められて体が動かなくなった。

「お前に、俺の何が分かるんだ…?」

威嚇するような調べに直の体がぴくんと跳ね上がった。
そんな彼女をみて秋山はくすりと嘲るように笑った。

「これが本当の俺だ…」

皮肉めいた笑みを浮かべながら秋山は掠れた声でそう告げた。
こんな馬鹿げたゲームから身をひくこともせずに自分を助けるんだと言い放った女…。
母とは違う…、筋の通った強さを持つ直のまっすぐな瞳が涙に潤みながら自分を見つめていた。

「そんな目で見るなよ」
「秋山さん、」
彼女の綺麗な心はこんなゲームに参戦しても変わってはいない。
けれど今の秋山にはそれが眩しくて痛かった。
ヨコヤによって踏みにじられた母への大切な思いが再び秋山の心を深く抉った。
それは破綻をきたしてしまいそうな程強く、大きく彼を揺さぶっていた。
直はそんな秋山に向かって手を伸ばした。

「秋山さん、」

直の手が腕へと触れる。伝わる彼女の温もりに秋山は哀しげに微笑んだ。
「こんなに弱くてびっくりしたか?」
「いいえ、」
「俺はあいつの策にはまった、でもどうしようもないんだ!俺のために母さんは死んだ。
俺はその敵をとらなくちゃいけない!あいつらに罰を食らわせてやらなけばいけない、
そのためにはこのゲームに勝たなくちゃいけないのに、俺は、俺は!!!!!」
「秋山さん!!」
吐き出すように叫んだ秋山の体を直は咄嗟に抱きしめていた。
苦しげな表情を浮かべて感情の吐露を重ねる秋山を直はもう見ていることは出来なかった。
「もう、もういいです。秋山さん!!」
直は秋山を抱く腕に力を込めた。
強張っている彼の背をあやすようにさすりながら強く抱きしめた。


「私が、あなたを守りますから!」

悲鳴のような直の言葉に秋山が反応した。弱々しい瞳がそろりと彼女を見つめていた

「お前が…?」
「そうです。私は秋山さんから離れません!このゲームからあなたを助け出します。」
「…無理…だ」
そういって強くしがみ付いてくる秋山を安心させるように直は言った。
「無理じゃないです…、私は、負けません!」
強い意志を感じる直の言葉に秋山の意識がふぅと遠くなった。
いままで張り詰めに張り詰めてきた心が砂のように崩れていく。
直の放つまばゆい光に目を開けていることができなくなった。
秋山はコトンと直の肩へと頭を預け、そのまま意識を失った。

「秋山さん!」

意識を無くした彼の重みに華奢な直の体がよろけた。
それを今まで事態を静観していた「水の国」プレイヤー「フクナガユウジ」が支えてくれた。
「あっ、フクナガさん。ありがとうございます」
「直ちゃん、勇気あるよね〜秋山すんごいキレっぷりだったっていうのにさー」
いつもどおりの口調ではあるが、
フクナガはそのまま一緒に秋山の体を支えてソファに横たえさせるのを手伝ってくれた。
そこへ事務局員エリーが姿を現した。

「神崎様…どうされましたか?」
「秋山さんが過労で倒れてしまったんです。」
「そうですか…」
目の前の異様な状況にもエリーの鉄面皮は崩れなかった。
彼女は眠る秋山を一瞥すると、静かに直の方を向き直った。
「神崎様、秋山様はゲーム続行可能ですか?」
「はい、大丈夫だと思います。けれど1時間だけ、秋山さんを休ませてもらえませんか?」
直は素直な気持ちをエリーへと告げた。
今はただ眠らせてあげたい。ささくれだった心が安らぐようにしてあげたい。
清廉な思いは直の眼差しから強く伝わってきた。

「あの…いいでしょうか?」
遠慮がちにかけられた言葉にエリーは頷いた。
「問題ありません。異例ではありますが1時間休憩とさせて頂きます」
「あっ、ありがとうございます!!」
直の顔にぱぁと明るい光が差した。
こんな闇の世界のゲームに身を投じているというのに彼女は「彼女らしさ」を失ってはいない。
光明が差す綺麗な心を持ったままでいられる希少な存在である神埼直。
だからこそ心に深い闇を抱える秋山深一も直に引き寄せられたのだ。

エリーはちらりと二人の姿をみやった。

「お二人ともゲームには必要不可欠な方々です。ごゆっくりお休みください」
深々と頭をさげてエリーは「水の国」ルームをでていった。
その心には含みを孕んだままで……。



「秋山さん…辛そう…」

時折苦しげにうめく秋山に膝を貸している状態の直は心配そうに彼を覗き込んだ。
意識を失ってから秋山は昏々と眠り続けている。
約束の1時間はとうに過ぎたが、事務局の計らいで続きの勝負は明日へと延期された。
何故そんな「特例」が認められたのかは分からないが、
今はただ秋山の疲弊を癒してあげることが出来るのが嬉しかった。
エリーが持ってきてくれた毛布をかけてやり、ゆっくり休めるように二人にしてもらっていた。

「秋山さん、今まで気がつかなくてごめんなさい」

思ったよりも柔らかい秋山の髪を撫ぜながら直は呟いた。
こんなにまで壊れかけた心を抱えながら自分を助けてくれていたことに全く気が付かなかった。
ずっと、ずっと強くて、不遜で、自信家で、何事にも揺るがない秋山さん…。
そんな彼の一面しか自分は見てこなかった。
心にずっと傷を抱えていた秋山の真の姿に気づくことが出来なかった。
バカ正直の直…。本当にバカ正直すぎて自分が嫌になった。
こんな自分に彼を守ることなど出来るのだろうか?
咄嗟とはいえ、出来ないことを口走ってしまったような気がする。

『また秋山さんを苦しめたらどうしよう。』

そう思うと心が締め付けられた。
痛いと思った。
秋山の助けにもなれないちっぽけな自分に腹がたった。

「あたしって本当にバカだ。」

熱いものが込みあがってきて直の瞳から涙が溢れた。
綺麗な雫が秋山の頬へと転がり落ちる。
それが、彼の意識の覚醒を促した。

「う…ん……」
「秋山さん!?やだ、あたしまたドジを!!おきちゃいましたか??」
慌てて涙を拭おうとする直の手を秋山の手が押しとどめた。
ばっちりと切れ長の瞳と目が合う。
そんな様子に更に慌てた直を見て秋山はくすりと笑った。

「何、慌ててんだよ…バーカ」
「え、、、!?」

いきなりの展開にしどろもどろになる直の頬に向かって秋山は手を伸ばした。
「泣いてた…のか?」
「やっ、、やだ違いますよ、汗。。そう汗、です!!汗ーーーー」
声が裏返りながらも精一杯強がってみせた。
倒れた秋山に心の負担をかけさせまいとする直の真摯な思いは
彼女を気丈に振舞わせていた。
そんな姿が痛々しく映り、秋山の顔に悲しげな笑みが浮かんだ。

「俺のせいか?」

秋山はすくりと起き上がり、直の涙を指先で拭ってやった。
そこにはいつもの秋山がいた。冷静沈着で不遜な眼を携えた青年。
けれどどこか優しさを感じさせる瞳が直を見つめていた。

「神崎直…、何で泣いてる?」
「だからこれは…、涙じゃなくて…あ…せ…です」

堪えていたものが溢れかえり、直の瞳から次から次へと涙が零れ落ちた
そんな彼女を今度は秋山が抱きしめていた。
大切なものを慈しむように、優しく、秋山の腕は直を包み込んでいた。

「心配かけて悪かった」
「秋山さん…」

ぎゅと背中に回された手が強く直を抱きしめる。
直もまた彼の胸へと頬をよせた。規則正しい心音が響いてくる。
秋山がいてくれる充足感に満たされながら直は瞳を閉じた。

「もう泣かないでくれ…お前が泣くと辛くなる」
「え?」
「お前の心が曇るのを俺は見たくない。母さんのような目にあわせたくない」
「秋山さん」

もう一度秋山は直の華奢な体を抱きしめていた。
ほんのりと伝わる熱に目を細める。
いとおしい。そう強く感じた。


「俺は、お前が…好きみたいだな」


自分で言って自分で思わず笑ってしまう。
思えば初めてあった時から惹かれていたのかもしれない。
真っ正直すぎて危なっかしい。自分がついていないと何をしでかすか分からない。
最初はどこか母と重なるところがあったが実はとても強い。
そんな不思議な魅力をもった彼女に知らないうちに陥落させられていた。
直の存在が自分に力を与えてくれる。
今まで闇に囚われていた心が嘘のように晴れていくのが分かった。
憎しみとは違う「想い」を感じ取った秋山の心は落ち着きを取り戻していた。


「ありがとう…直」

はじめて呼ぶ彼女の名に恋情を込めながら、秋山は直へと口付けた。
優しい、優しいキスから彼の心が流れ込んでくる。
はじめて触れる秋山の感情に直はまた涙が出そうになった。
こんなに繊細で優しい秋山を守りたい。
その想いがよりいっそう強くなった。


『私が秋山さんを守ります』


決意の言葉をかみ締めるように直は秋山の思いを受け入れていた。
しかしゲームはまだ終わらない。
二人の運命はまだ流転している。



END →「swear



ここまでお読み頂きどうもありがとうございました。
秋×直への愛と10話予告編の荒んだ秋山さんをみて
めくるめく妄想がこんなことに〜。・゚・(ノД‘)・゚・。
超自己満足小説ですが楽しんでいただけると幸いです^^
2007.6.10 るきあ

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