REAL DISTANCE


「なんでお前がここにいるんだ…?」

秋山の眼前には2年前より少しだけ大人びた直の姿があった。
彼女は秋山を認めると大きな瞳を綺麗に輝かせ、
微笑を煌めかせた。

「秋山さん!」

彼女は辞退すると思っていた。
でも、もしかして・・・、

そんな思いに駆られて参加した四回戦。
人の良い彼女を運命は弄ぶかのようにまた過酷な戦いへと導いた。
秋山は怜悧なまなざしを直へと傾けながら静かに言った。

「何故、辞退しなかったんだ?」
「だって、秋山さんに会えるかもって思ったから」
「・・・・・・・は?」

緊迫した空気がいきなり直の色に染められた。
外見は大人びてもやはり彼女は彼女だ。
秋山は苦笑を浮かべながら、直へと視線を傾けた。

「秋山さん、2年前いきなりいなくなってしまったじゃないですか!
心配してたんですよ!!」
ぷぅと膨れた直の額を秋山は指で弾いた。
「秋山さん」
「どっちがだよ・・・」
自分の心配より人の心配をする彼女は相変わらずだった。
秋山は肩を竦めながら言った
「馬鹿正直なだけじゃ、今回は危ないぞ」
秋山の言葉を受けて、直は真摯な瞳で秋山を見つめた。

「馬鹿正直じゃあ、いけませんか?」

戸惑うこともなく、まっすぐに言う。
かなわない。
秋山は小さな笑みを口元に浮かべた。

「いいんじゃないか、別に。」

変わらない彼女の強さに、
勇気をもらったような気がした。


この世に神がいるというのなら
彼女を護る力を、

どうか……。


END


2009.11.09るきあ


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