ピピピッ

携帯のアラームが目覚めの時刻を告げた。
直は眠い目をこすりながらそれを止める。
隣で安らかな寝息を立てている秋山を起こさないようにそっと身体をずらした。

「起きないでね…」

ぽつりと呟きながらベットを出ようとする直の腕を秋山の手が繋ぎとめた。
驚いて振り返ると秋山が眠たそうに緩んだ瞳を直へと向けていた。

「何処いくの?」

寝起きで掠れている声が少し怒っているようにも聞こえる。
直は笑顔を作り、秋山の顔を覗き込んだ。

「学校ですよ、秋山さん」
「……なんで?」
「なんでって今日は一限から授業が…きゃっ!」

不意に身体が浮いて直は強い力で秋山へと抱き寄せられる。
気がつけば直は再び彼の胸の中へと戻ってきていた。

「秋山さん、」
「もう少しだけ、いて」

秋山は懇願するように囁くと直を抱く腕に力を込めた。
彼女の優しい香りが心地よく秋山の心をくすぐった。
この温もりを今日は離したくない。
そんな彼に応えるように直は秋山の胸へと頭を傾けた。
何が自分をそうさせるのかは分からないけれど
今は、秋山の気持ちを充たしてあげたい。
心が告げる素直な思いを直は秋山へとぶつけた。

「秋山さんがそう望むなら」
「うん、いて。」

甘えるように言う秋山に直は黙って頷く。
彼女の答えに秋山はほっとひとつ息をついた。

彼女を知ってから…、直を求めるようになってから自分は弱くなった。
誰かに対して甘言を囁くなど以前の自分には全く考えられないことだった。
そんなささくれだっていた心に潤いが戻ったのは
彼女が心をくだいて癒しを与えてくれたおかげだった。
こんな風に自分の弱さを露呈されてもなお、自分が彼女を求めてしまうのは
神崎直という存在を常に渇望しているからなのだと思う。

もうなくせない、大切な、なにか…


秋山にとってそれが「神崎直」だった。


「一緒に眠ろう」


言いながら秋山は急激な睡魔に襲われた。
彼女が傍にいてくれる安心感からなのだろうか?
目を開けていることが出来なくなった秋山は直の肩口に頭をよせて、
そのままゆっくりと瞼を閉じた。

「おやすみなさい、秋山さん」


優しく囁かれた言葉を合図に秋山は眠りの淵へと落ちていった。
寄り添う暖かさをその身に感じながら、
秋山は深く、深く眠った。



END






「眠りによせて」とは対になる作品です。あちらは直の心情でこっちは秋山さんの心情です。
書き分け微妙なのはお許しくださいませ。ふがいないぜ!!自分
ただ単に添い寝シーンが書きたかっただけでなんだか内容がないよう(爆)
それにちょっと甘えん坊炸裂な秋山さん(笑  なんでこうなる???
お次はドシリアスなやつに戻ります。甘々は書けば書くほどドツボにはまるっす。

2007.7.12るきあ

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